柿右衛門

柿右衛門の白い美
「濁手」

柿右衛門
製陶技術保存会について

右衛門の作品の大きな特徴の一つに、『濁手素地』と呼ばれる、柔らかく温かみのある乳白色の素地があげられます。柿右衛門様式の美しい赤絵に最も調和する素地で、1670年代にその製法が完成したと言われています。

しかし江戸中期(1700年代)になると、「柿右衛門様式」に変わり金・赤を多用した「金襴手様式」が色絵の主流となったのに加え、内乱によって下火になっていた中国・景徳鎮磁器の輸出が再び本格化し、オランダ東インド会社による肥前磁器の輸出が減少、江戸幕府による貿易制限等国内情勢の変化も相まって、濁手の製作は一時中断を余儀なくされました。

その後時代は明治、大正、昭和と移り、濁手の復興が待ち望まれる中、十二代柿右衛門(1878生~1963没)はその子十三代柿右衛門(1906生~1982没)とともに長い間途絶えていた濁手素地を復元させるため、柿右衛門家に伝わる『土合帳』等の古文書を基に試行錯誤を重ねます。

そして1953(昭和28)年、ようやくこれに成功し、その技法は1955(昭和30)年3月、記録作成等の措置を講ずべき無形文化財に選択されました。さらにその製陶技術は1971(昭和46)年1月、各工程の特に優秀な技術者で構成される「柿右衛門製陶技術保存会(会長 十三代酒井田柿右衛門)」の設立を機にその保存と育成が図られ、同年4月には国の重要無形文化財「柿右衛門(濁手)」として総合指定を受けます。

また同保存会は1976(昭和51)年4月、その保持団体として認定され、十三代没後は、十四代、十五代柿右衛門がその技術集団を統率し次代へ引き継ぐリ-ダーとしてその事業を継承、現在に至っております。

赤絵の完成と
柿右衛門様式の確立

有田泉山で白磁鉱が発見され、日本で初めて磁器の焼成に成功したのが、元和2年(1616年)頃といわれています。

寛永年間(1624年~1645年)頃、肥前長崎の港では中国明朝の色絵磁器が陸揚げされていましたが、有田でもこれを受け、色絵磁器の生産が待ち望まれるようになっていきました。
このような情勢下で酒井田喜三右衛門は伊万里の陶商 東島徳左衛門らの協力を得て日本で初めて赤絵磁器を完成。正保4年(1647年)頃のことでした。
その酒井田喜三右衛門が後の初代柿右衛門その人です。

その後、有田の磁器は急速な進歩をとげ中国の磁器にかわりオランダ東インド会社の手によって広くヨーロッパに紹介されます。
中でも柿右衛門の赤絵は特に賞賛され、18世紀になるとヨーロッパ各地の窯で「柿右衛門様式」の倣製品が数多く生産されました。
ドイツのマイセン窯、オランダのデルフト窯、フランスのシャンティー窯などの「柿右衛門写し」は現在でも世界中に残っています。
一方国内においても肥前鍋島藩をはじめ諸藩から城中の調度品や贈答品としての特別注文を受けていたことが、酒井田家に残る「御注文絵形」など一連の文献によって知ることができます。

初期の赤絵は、中国明朝の磁器を手本にして出発したため中国的な「花鳥図」、「鳳凰図」などの絵柄が多かったようですが、三、四代柿右衛門の頃から「鹿紅葉」、「粟鶉」、「波千鳥」、「秋草」、「松竹梅」などの日本画的な文様が定着し、柿右衛門独特の乳白色の素地(濁手素地)と相まってその美しさは高く評価され、いわゆる「柿右衛門様式」が確立されるのです。
こうして初代の赤絵創始から約370年もの間、柿右衛門の技術と精神は絶えることなく代々受け継がれ、現在の十五代柿右衛門へと継承されています。

柿右衛門様式について

田の色絵磁器は、1659年頃に本格化するヨーロッパ等への輸出によって生産が拡大され、それに伴いより白く傷や歪みのない素地を作る技術も急速に進歩していきます。そんな中、柔らかくて温かみのある乳白色の素地の上に、余白を十分に残した明るく繊細で絵画的な構図を特徴とする色絵磁器が作られるようになりました。
それは1670年代頃には技術的にも完成され、いわゆる典型的な「柿右衛門様式」として確立していきます。

柿右衛門様式の色絵磁器は、国内はもとより国外でも高く評価され、オランダ東インド会社(VOC)の手によってヨーロッパ等の国々へ大量に運ばれていきました。当時のヨーロッパの王侯貴族たちは初めて目にするその華麗な色絵磁器に魅了され、自分たちの宮殿や邸宅を飾るため財を傾けてまでも競って手に入れたといわれています。

この「柿右衛門様式」は1690年代頃まで有田の色絵の流行様式となり、乳白色の素地だけでなく青味を帯びた白磁や染付を用いた素地にも、同じような雰囲気の色絵を施したものがたくさん作られるようになりました。現在では一般に、これらも含め「柿右衛門様式」と呼ばれています。

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